高野山からのメッセージ

yjimage[6].jpg

日本仏教の中でも空海の教えは難しいものでありながら、社会に最もよく根付いている教えでもあります。空海の教えは、死後の世界、来世に期待するという思想とは違い、人には遠い過去も未来もなく、今、この瞬間をどう生きていくのかを示してくれます。即身成仏—「即ち身が成仏なり」—人間の心の中には完全円満な仏が宿っており、その本体を大いなる仏(大日如来)といいます。この仏の核が心の中に存在し、その周りを肉体という分子が活動しているのです。そしてこの存在こそが人間なのです。世界そのものの中心に大日如来がいて、それを様々な仏菩薩が取り囲んでいる。これが曼荼羅、つまり空海の宇宙観です。空海はまた、「大切なのは、この世に調和のとれた理想世界である蜜巌浄土を建立すること」と説いています。欲も煩悩も、すべて悟りへの道であり、揺るぎない欲楽の実現者こそが即身成仏した人ということです。まさに、現実第一として組み立てられた空海独特の思想であります。すみだ喜子さんの「勝者の占術」は、そうした空海の思想を礎として、好ましくない状況にある時、私たちはどのように生きたらよいのかを示してくれます。物質的な繁栄は享受しながらも、八方ふさがりの閉塞状態の世の中で、心は満たされていない昨今、「勝者の占術」を幸せの鍵として、ご自身で本当の幸せを掴んでください。頭の中だけで理屈を知っていても効果は生まれません。ご自身の宿命を知り、ルールに従って自分の手で幸せを掴むことです。本当の幸福というものは誰からでも愛されることではなくて、誰をも差別なく愛すること。己の心に打ち勝つための原動力となることを心より願います。ーあなたの心が暗闇であれば、巡り会うものはすべて禍いとなります。 あなたの心が太陽であれば、出会うものはすべて宝となります。合掌。           (遍照発揮性霊集 第八巻)     高野山蓮花院  大僧正 東山泰清